薄毛治療の最先端!iPS細胞による毛髪再生医療と自毛植毛の未来

2012年、山中伸弥教授のノーベル生物学・医学賞に沸いた「iPS細胞」ですがこの幹細胞の一つであるiPS細胞によって薄毛治療の分野にも再生医療の期待が高まっています。

再生医療とは?
怪我や病気で冒された組織を自身の幹細胞(細胞の種)を使って元通りの形や機能に再生する最先端医療のこと。

再生医療に最も期待が持てるのは「ES細胞」なのですが受精卵から分離し、ヒトにもなる細胞であるため倫理的に問題があるとして各国でES細胞を用いた研究は自粛されていました。しかし、このほど山中伸弥教授らによってiPS細胞の研究が進み、自己の幹細胞を用いた治療ができるようになったことで研究が飛躍的に進み、薄毛治療の分野でも期待が持たれてます。

iPS細胞とは?
ヒトの皮膚などの細胞に特定の4つの遺伝子を導入し人工的に作った幹細胞です。様々な細胞への分化が可能な万能細胞で患者自身の皮膚や血液から作製できるため細胞を移植した際も拒絶反応が起こらないと考えられています。
太郎
ちなみに、有名な話ですが、iPSは「induced pluripotent stem(人工多能性幹細胞)」の略称で、頭文字の「i」が小さいのは世界的に普及しているアップル社のiPhoneやiPodのように広く普及して欲しいという願いと遊び心が込められているからです。

薄毛治療の分野でも再生医療は進んでいます

現在このiPS細胞を用いた医療は薄毛治療の分野でも進んでおり、一部研究機関などでは早くも研究成果が報告され始めています。

例えば、2015年4月19日のNHKサイエンスZEROの「細胞技術が毛髪再生を変える」で再生医療について取り上げられた回があります。

サイエンスZERO「細胞技術が毛髪再生を変える」

NHKオンデマンド

有料になりますが100円ほどで見れるので気になる方は見てみてください。
現在は視聴できなくなってしまいました

かいつまんで解説すると内容は以下になります。

既存毛を活性化させる再生医療

AGA(男性型脱毛症)は簡単に言えば、毛母細胞の分裂が止まることで毛髪の成長が止まる症状のことです。つまり、髪の成長には毛母細胞の分裂(活性化)が鍵になります。

この毛母細胞を活性化させるには毛乳頭細胞が重要であり、毛乳頭細胞を包み込んでいる毛球部毛根鞘細胞(もうきゅうぶもうこんしょうさいぼう)がやがて毛乳頭細胞になる若い細胞だと考えられているようです。

つまり「毛球部毛根鞘細胞⇒毛乳頭細胞⇒毛母細胞」という発毛のメカニズムの第一段階にあたる毛球部毛根鞘細胞に着目し、毛乳頭細胞を刺激し、毛母細胞の細胞分裂を活性化させる、いわば抜本的な治療法の研究が大手化粧品メーカー資生堂によって進められています。

現在考えられている治療の手順は以下の通りです。

後頭部から毛包を採取し、そこから毛球部毛根鞘細胞を取り出し、培養し、頭皮に戻すことで毛乳頭細胞を活性化させ、ヘアサイクルが短くなった髪の成長期を伸ばすという仕組みです。

方法としては映像の中では注射針で細胞(培養された毛球部毛根鞘細胞)を注入することで細胞自らが既存の毛乳頭細胞の周りに近づき、毛乳頭細胞が刺激され若返るとしていました。

この方法は医療機関と臨床研究を進めながら2018年に実用化を目指しているようです。

太郎
AGAの影響を受ける毛髪をAGAの影響を受けにくい毛髪に変える治療法ではないため、どちらかというと育毛の延長上にある治療法のような印象を受けます。根本的な治療法になるのかは不明です。

毛包を作り出す再生医療

毛包は毛髪を生産する器官であり、当サイトで紹介している自毛植毛においても最も重要な器官です。この毛包を作り出す再生医療が理化学研究所によって進められています。

毛包は上皮系(じょうひけい)と間葉系(かんようけい)の2つの細胞が刺激し合うことで作られることが分かっており、この上皮系細胞と間葉系細胞を高密度で密着させる環境を作り出すことで人工的に毛包を作り出すことに成功しています。

しかし上皮系細胞と間葉系細胞の培養技術が確立しておらず、これをクリアすることが今後の再生毛包の課題でした。現在は細胞を無限に増やせるiPS細胞を使うことで毛包の再生研究が進められています。

現に慶応義塾大学医学部の研究チームがiPS細胞を利用し、毛包を部分的に再生する実験に成功したとの報告もあります。

研究によりiPS細胞を上皮系細胞のケラチノサイトになる手前まで成長させ、マウスの間葉系細胞である幼若繊維芽細胞と混ぜ合わせ、マウスの皮膚下に注入したところ、2~3週間後にマウスの毛包の構造ができ、毛の再生にも成功しています。

この技術をヒトに応用できればiPS細胞から培養した毛包や毛乳頭細胞を薄毛部分に移植し、再び毛が生える毛穴を作ることができます。

まだiPS細胞による間葉系の細胞の培養技術は確立されておらず、ここが今後の課題のようです。まだまだ実用化への道のりは遠く、実用化の目途は10年以内とのことです。

植毛の未来は明るいかも?

既存毛への治療は2018年、毛包の再生はまだまだ時間がかかりそうではありますが、実用化の兆しが見えていることは確かです。

どちらの方法も映像の中では注射針で細胞を注入していましたが、毛包の移植には見た目の自然さも重要になるため、植毛のように毛穴(ホール)を作成し、移植する方向に進んでいくのではないかと考えられます。注射針での移植など簡易的な方法の可能性もあるかもしれませんが……ここは専門家ではないのでわかりません。

自毛植毛との違いは?

再生した毛包は自分のものなので言ってしまえば自毛なのですが、再生医療と現在の自毛植毛の最大の違いは数に限りがなくなるという点ではないでしょうか。

自毛植毛の場合は自分の髪を移植するため数に限りがあります。再生された毛包であれば数に限りはありません。さらに後頭部からドナーを採取する必要もなくなると予想できます。

そうなれば、何度でも毛包を移植でき、移植された毛包はAGAの影響を受けないため移植した分だけ髪を増やせるようになります。


今後の研究によりどのような治療法・手順が確立されるのかはわかりませんが自毛植毛と同様に植え付けることを考えた場合、自毛植毛による経験とスキルのある植毛業界は今以上に未来が明るそうな気もします。

少なくとも薄毛治療、植毛分野の未来に期待しても良いのではないでしょうか。

と言っても実際は数年後、下手をすれば数十年後の話かもしれません。現在薄毛に悩んでいる場合は何十年も待つことは現実的ではないので今できる治療法を選択するのが良いでしょう。

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